日本では諸外国に比べて、男性の育児・家事参加が少なく、女性の育児・家事の負担が重いことが指摘されいてます。実際、第1子出産を機に離職する女性もいます。特に30代の労働力率が低くなる傾向にあり、仕事と子育てとの両立が大きな課題の1つとなっています。また、日本企業における女性の役員比率・管理職比率は諸外国と比べて低い状況です。女性の活躍を推進するには仕事と家庭の両立を支援し、多様な働き方を実現する施策の整備が重要となります。このページでは、日本において、多様な働き方を推進する企業の取り組み状況をご紹介しますので、是非お役立てください。
目次
女性が管理職昇進を望まない理由~仕事と家庭の両立が困難になる~
労働政策研究・研修機構の「男女正社員のキャリアと両立支援に関する調査結果」 (2014)では、従業員300名以上の企業における役職のない男女一般社員と係長・主任クラスの社員を対象に、課長以上への昇進を望まない割合と、昇進を望まない理由について調査しています。その結果によると、課長以上への昇進を望まない女性の一般社員(役職なし)の割合は約9割、女性の係長・主任でも約7割と、男性と比べて高いことが分かりました。
昇進を望まない理由は、女性では「仕事と家庭の両立が困難になる」が最も多く、約4割に上ります。
引用:労働政策研究・研修機構の「男女正社員のキャリアと両立支援に関する調査結果」 (2014)
ワーク・ライフ・バランスの取り組みは、働きやすい職場づくりのためだけでなく、女性の長期就労・昇進を進めるためにも重要と言えます。女性のキャリア登用支援策は、ワーク・ライフ・バランス施策との両輪で進める必要があると考えられます。
企業が女性活躍推進に取り組む意義
女性の活躍推進は企業経営にプラスの効果をもたらす
企業が女性活躍を推進することは、労働力を補うだけでなく企業経営にプラスの効果をもたらすことが示されています。海外での先行研究では、女性の取締役比率を高めると、取締役の能力・スキル・経験の多様化から、取締役会の監督機能・業務執行機能が向上し、企業価値指標 やROEなどの収益性指標が高まるといった分析結果が出ています。さらに、積極的に女性の登用を推進することは、優秀な人財の発掘や、女性ならではの視点を活用した新しい製品・サービスの創出につながり、長期的に、企業としての業績や競争力などに結びつくという効果が期待されます。
また、日本の上場企業を対象にして行われた調査について、経年変化を見ると、女性活躍推進が「採用活動」や「従業員のモチベーション、離職防止」に影響しているとの回答割合が高くなっており、人材確保策としての認識が強まっています。
グローバルな競争環境を生き抜くしなやかな強さをもつうえで、女性の活躍推進が鍵になります。
引用:平成24年5月22日付け女性の活躍による経済活性化を推進する関係閣僚会議 経済産業大臣配付資料(一部修正)
これらを踏まえ、多様な働き方についての先進的な取り組みをしている事例を見ていきましょう。
働き方① 柔軟な勤務場所を認める制度の導入
国土交通省「令和4年度 テレワーク人口実態調査-調査結果(概要)-」によると、雇用型テレワーカーの比率は増えており、特に首都圏においては、約4割となっています。
引用:国土交通省「令和4年度 テレワーク人口実態調査-調査結果(概要)-」
参考となる事例
富士通では、勤務開始・終了時間は仕事の忙しさやライフとのバランスに応じて柔軟に調整、働く場所は自宅やオフィス、社外のサテライトオフィスなどから選択できます。出張先で延長滞在を行う場合も旅費を会社負担にする「+Voyage」という制度を設け、ワーケーション実施を推進しています。
参考:Fujitsu Workation Partnership ワーケーションへの取り組み : 富士通
ポイント
出張先の延長滞在に対しても旅費を会社負担にするユーニクな事例となっています。
働き方② 有給休暇の取得促進に向けた取り組み
「年次有給休暇の取得に関するアンケート調査(企業調・査労働者調査) (2021年7月8日))」労働政策研究・研修機構)によれば、企業における時間単位年休取得制度の導入状況では、「導入している」 企業が約2割となっています。企業における時間単位年休取得制度の導入理由(複数回答)では、「日単位・半日単位に満たない時間の取得が可能で、便利」(70.0%)がもっとも高く、次いで、「個人的な事情に対応した休暇取得が可能になる」(57.3%)、「年休の取得促進のため」(56.5%)、「育児、介護の支援」(49.0%)、「仕事と治療の両立支援」(42.1 % )となっています。
引用:調査シリーズNo.211『年次有給休暇の取得に関するアンケート調査(企業調査・労働者調査)』|労働政策研究・研修機構(JILPT)
参考となる事例
ソニーグループでは、「フレキシブルキャリア休職制度」を整備し、配偶者の海外赴任や留学に同行して知見や語学・コミュニーケション能力の向上を図るための休職(最長5年)や専、門性を深化・拡大させる私費就学のための休職(最長2年)が可能になっています。
参考:ソニーグループポータル | 採用情報 | 多様性を推進する取り組み (sony.com)
ポイント
仕事と生活の両立やリスキリングを実現することが可能な休職制度を整備している事例といえます。
働き方③ 多様なキャリアコース整備に向けた取り組み
みらいワークスは、「首都圏大企業管理職1,000名に対する地方への就 業意識調査」を実施したところ、地方の中小企業で副業をすることに対して、45~54歳の回答者のうち64.7%が「興味がある」とした結果となっています。
引用:2023年度 首都圏大企業管理職1,000名に対する「地方への就業意識調査」を実施 | みらいワークス (mirai-works.co.jp)
参考となる事例
東京海上日動火災保険では、全国の従業員が現在所属している部署の業務を担いながら、自らの希望に基づき、業務の一環として、本店コーポレート部門のプロジェクトへの参画にチャレンジする「プロジェクトリクエスト制度」の導入や、副業を積極的に推進しています。
参考:社員の挑戦を支える「プロジェクトリクエスト制度」の導入 ~他の部署のプロジェクトに参画できる社内副業~
ポイント
原則、副業を認める方針へと転換して、従業員の自律的なキヤリア形成を支援した事例といえます。
働き方④ 育児休業制度に関する取り組み
「男性の家事・育児」に関するアンケート調査結果(日本経済団体連合会 2023年)によれば、男性の家事・育児を促進するため、現在取り組んでいることとしては、「短時間勤制務度の導入」(88.1%)が最も多くなっています。「男性の育児休業取得促進に関する方針や関制連度等についての社内周知」(87.4%)、「テレワーク制度の導入 」(83.8%)が多くなっています。
引用:「男性の家事・育児」に関するアンケ―ト調査結果 (keidanren.or.jp)
ポイント
4分割できることで、取得しやすい環境づくりを推進しています。
働き方⑤ 介護で柔軟な働き方を認める制度の導入
NTTデータは、従業員数300人以下の企業が85%相当となった、「令和元年度仕事と介護の両⽴等に関する実態把握のための調査研究事業」を発表しています。直近1年間における家族の介護を主な理由として退職した従業員の有無については、「はい」が8.4%であり、退職前の相談の有無については、「何らかの相談を受けたことがある」が56.0%となっています。また、退職前の介護休業の利⽤については、「介護休業の利⽤者がいた」は22.8%で、退職前の介護休業以外の両⽴⽀援制度の利⽤については、「介護休業以外の両⽴⽀援制度の利⽤者がいた」が10.9%となっています。
引用:令和元年度 仕事と介護の両⽴等に関する実態把握のための調査研究事業
参考となる事例
セガサミーホールディングスでは、「セガサミー介護休業給付金」「介護帰省サポート」「セレクトタイム制度」「セレクトロケーション制度」といった、多様な施策を実施しています。
参考:仕事と介護を両立できる職場環境のシンボルマーク「トモニン」を取得|ニュースリリース|セガサミーホールディングス (segasammy.co.jp)
ポイント
セガサミーホールディングスは、仕事と介護を両立できる職場環境の整備促進に取り組んでいる企業として、厚生労働省が定めるシンボルマーク「トモニン」を取得ています。
まとめ
この記事では、多様な働き方を推進する企業の取り組みを紹介しました。日本の労働環境において、男性の家事・育児参加が少なく、女性の仕事と家庭の両立の課題があること、そして女性の役員比率や管理職比率が低いという現状が指摘されています。女性の活躍を推進するには、仕事と家庭の両立を支援し、多様な働き方を実現する施策の整備が重要となります。
ディスコ・キャリタスリサーチの調査では、企業側からもっと発信してほしい情報として、男女ともに最も多いのは「業残や休日出動の実態」、次に「多様な働き方の制度(在宅勤務、フレックスタイム制など)」「転勤の実態」と続きます。実際に寄せられた声からも、学生からは聞きづらい勤務実態や年収、具体的な働き方の事例など、現実に則した情報を欲していることが挙げられます。
出典:ディスコ・キャリタスリサーチ「卒業直前に聞いた「キャリアプラン・ライフプランに関する調査」」
「さんかくねっと」では、多様な働き方を推進する企業をご紹介します。「さんかくねっと」では、女性の活躍推進、性別を問わず仕事と家庭の両立支援に取り組む企業を応援します。
関連トピックス
- 企業向けトピックス
2022年7月8日の「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(以下、女性活躍推進法」とします)の制度改正により、常時雇用…
- 企業向けトピックス
くるみん認定とはくるみん認定とは、「子育てサポート企業」として厚生労働大臣から受けられる認定のことです。次世代育成支援対策推進…