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新卒採用での課題を解決する「通年採用」「インターンシップ」「スキルセット」について

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近年の深刻な労働力不足により、多くの企業が採用活動で頭を悩ましています。背景には、少子高齢化や団塊世代の一斉退職、非正規雇用の待遇の低さなどの問題が挙げられており、また、終身雇用が当たり前だった時代とは異なり、転職を繰り返す人も増えています。そのため、国を挙げて働き方改革や少子化対策に力を入れていくことが必要とされています。

一方で、企業においても、日本独自の新卒の一括採用制度の問題が浮き彫りになり、採用活動において、より多様性を受け入れ、個々の学生や求職者の能力や適性を正確に評価するための新たなアプローチが求められています。

企業としては、変化する労働市場や社会のニーズに柔軟に対応し、持続可能な成長を実現するためにも、新卒採用の枠組みを見直し、かつ中長期的な採用戦略を採用することが不可欠となります。そこで、新卒採用での課題を解決するために必要な要素となりうる「通年採用」「インターンシップ」「スキルセット」について見ていきましょう。

新卒採用について

最近の新卒採用としては、2023年3月卒業予定の大学生・大学院生対象の大卒求人倍率は1.58倍と、前年22年卒の1.50倍より0.08ポイント上昇しました。21年卒は新型コロナウイルスの影響により約10年ぶりに倍率が大きく減少したものの、23年卒では回復傾向にあることがわかります。

※出典:株式会社リクルート 就職みらい研究所 就職プロセス調査(2023年卒)

ワークス大卒求人倍率調査(2023年卒) (works-i.com)

最近の新卒採用の特徴

そのような状況で、最近の日本における新卒採用は、次のような特徴がみられます。

多様性とインクルージョンの重視

グローバル人材の採用

国内外を問わず、多様なバックグラウンドを持つ学生の採用に力を入れる企業が増えています。英語をはじめとする言語能力だけでなく、異文化理解能力を持つ人材が重宝されています。

性別や学歴の多様化

女性や留学生の積極的な採用、さらには大学名にこだわらない選考が進んでいます。能力や適性を重視した採用が行われるようになり、ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)の観点から多様な人材を受け入れる企業が増加しています。

採用方法の変化

オンライン選考の普及

新型コロナウイルス感染症の影響もあり、オンラインでの面接や選考が普及しました。場所にとらわれず、時間を有効に使って選考が行えるため、効率的な採用活動が可能になっています。

通年採用の拡大

従来の新卒採用に加え、通年採用を行う企業が増えています。企業は随時人材を確保できる柔軟性を持ち、学生は自身のタイミングで就職活動ができるようになります。

キャリア意識の変化への対応

インターンシップの充実

学生の職業理解を深めるため、実践的な業務体験を提供するインターンシップの機会が増加しています。企業側も、インターンシップを通じて学生を早期に確保することを目指しています。

自己PRやストーリーの重視

学生が自身の経験やスキル、価値観と実際の行動をつなげたストーリーをアピールすることを重視する選考が増えています。書類選考や面接での自己表現力が、採用の重要な判断基準となっています。

労働市場のニーズの変化

スキルセットの重視

専門性や技術スキルを持つ学生への需要が高まっています。特にIT、デジタルマーケティング、データ分析などの分野では、専門知識を持つ新卒者への需要が増えています。

柔軟な働き方への対応

リモートワークやフレックスタイムなど、多様な働き方を支援する制度を整える企業が増えています。これにより、ワーク・ライフ・バランスを重視する学生のニーズに応えています。

これらの特徴は、変化する社会経済環境や技術の進化、そして新世代の価値観に対応しようとする企業の努力を反映しています。新卒採用の枠組み自体が、より柔軟で多様な人材を受け入れる方向へと進化しているのが現状です。

新卒採用が導入された経緯

現状の新卒採用の特徴を挙げましたが、世界的にも珍しい新卒採用システムが日本で広く導入された背景には、高度経済成長期の労働市場の特性や社会経済的な状況が深く関わっています。以下で、その導入経緯を見ていきましょう。

高度経済成長期
1950年代後半から1970年代にかけての高度経済成長期には、日本経済が急速に発展しました。この時期、多くの企業が大量生産・大量消費を背景に急成長し、それに伴い大量の労働力が必要とされました。企業は安定した人材供給源として、新卒者を大量に一斉に採用するシステムを確立しました。

労働力の安定供給
新卒採用システムは、企業にとって若くて教育可能な人材を安定的に確保する方法として機能しました。また、学生にとっても就職活動が一定の期間に集中するため、予測可能で計画的なキャリア形成が可能になりました。

終身雇用制度との相互作用
新卒採用は、終身雇用制度や年功序列制といった日本特有の雇用慣行と密接に結びついています。新卒者を一括で採用し、長期にわたって育成・昇進させることが、これらの雇用慣行を支える基盤となりました。

教育システムとの連携
日本の教育システムと新卒採用システムは、相互に密接に連携しています。大学を卒業する春に新たな社会人が誕生することで、企業は毎年同じ時期に新卒者を迎え入れる準備ができ、学生も卒業と同時に社会に出るタイミングが明確になりました。

現在の新卒採用の問題点

グローバル化や労働市場の多様化、働き方の変化などにより、新卒採用システムが抱える問題点が明らかになってきました。企業と労働者双方のニーズに柔軟に対応できる新たな採用方法が求められているのが現状です。
新卒採用システムは、時代と共に成長してきた日本独自の文化や経済的背景から生まれたものであり、その利点と限界を理解することは、今後の採用戦略を考える上で重要です。まずは、新卒採用の問題点から見ていきましょう。

機会の不平等
新卒採用は、大学を卒業する特定の時期に重点を置いているため、その時期に就職活動を行わなかった、または卒業が遅れた学生が不利になる可能性があります。また、中途採用市場に比べて新卒市場が過度に優遇されることで、年齢や経験を重ねた求職者に対する機会が限られてしまいます。

人材のミスマッチ
企業は、学生が社会人経験を持っていないことから、実際に働き始めてみるまでその人材が企業に適合するかどうかを完全には把握できません。これは、入社後の早期離職やキャリアのミスマッチを引き起こす要因となり得ます。

キャリア選択の早期固定化
学生は社会に出る前にキャリアを選択し、企業に長期間留まることが期待されるため、キャリアの柔軟性が損なわれがちです。これにより、個々の能力や適性が十分に発揮されない場合があります。

学生の学業への影響
採用活動が学年の早い段階で始まるため、学生が就職活動に多くの時間を割かざるを得ず、学業に対する影響が懸念されます。

多様性の欠如
新卒採用は、似たようなバックグラウンドを持つ新卒者を採用する傾向があるため、企業内の多様性が損なわれる可能性があります。これは、グローバル化や多様性が重視される現代のビジネス環境において、企業の競争力を低下させる要因となります。

柔軟性の欠如
新卒採用システムは、労働市場の変化や個々の企業のニーズに迅速に対応するのが難しいという問題があります。企業が年中いつでも必要な人材を採用できる通年採用のような柔軟性に欠けています。

新卒採用の問題点を解決するには

新卒採用システムの問題点を解決するためには、以下のような取り組みが考えられます。これらの取り組みは、個々の企業の状況やニーズに応じて適宜対応する必要がありますが、新卒採用システムに関連する問題の解決に向けた一歩となる可能性があります。

通年採用の導入
年間を通じて採用活動を行うことで、学生が卒業時期に縛られることなく、また企業が必要とするタイミングで適切な人材を採用できるようになります。

中途採用の活性化
中途採用市場を活性化させることで、キャリア形成の多様性を促し、経験豊富な人材の流動性を高めることができます。

インターンシップの充実
実際の職場での経験を通じて、学生が自身の適性や興味を確かめる機会を増やすことで、人材のミスマッチを減らすことができます。

キャリア教育の強化
学校教育の中でキャリア教育を強化し、学生が自己理解と社会理解を深めることで、より適切なキャリア選択ができるようにすることが重要です。

ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)の推進
多様なバックグラウンドを持つ人材の採用を促進することで、企業内の多様性と革新性を高めることができます。

柔軟な働き方の導入
テレワークやフレックスタイム制度など、柔軟な働き方を導入することで、仕事と私生活のバランスを取りやすくし、特に育児などでキャリアにブランクがある人の再就職を支援します。

パフォーマンスベースの評価制度
働く時間ではなく成果で評価する文化を確立することで、公平な評価と昇進の機会を提供することができます。

メンター制度の導入
若手社員に対して、経験豊かな社員がメンターとしてキャリア形成をサポートする制度を設けることで、社員の成長とキャリア発展を促進します。

日本の新卒採用システムには問題点があり、企業と労働者双方のニーズに柔軟に対応できる新たな採用方法が求められています。新卒採用システムは、時代と共に成長してきた日本独自の文化や経済的背景から生まれたものであり、その利点と限界を理解することは、今後の採用戦略を考える上で重要です。その問題点を解決するために必要なキーワードとして、「通年採用」「インターンシップ」「スキルセット」について、それぞれ見ていきましょう。

通年採用とは

通年採用とは、企業が年間を通じて随時新しい従業員を採用することを指します。伝統的な日本の新卒採用システムでは、新しい卒業生を一年の特定の時期(例えば、春)にまとめて採用するのが一般的ですが、通年採用では、企業は年中いつでも職位が空いているときに採用活動を行います。
この方法の利点は、企業が必要な時にすぐに人材を確保できる柔軟性があることです。また、学生や求職者にとっては、卒業時期や転職を考える時期に制限されず、年間を通じて就職活動ができるため、機会が広がります。通年採用は、特に即戦力を求める企業や、スキルや経験を重視する職種で好まれる傾向があります。

インターンシップの状況

日本におけるインターンシップの実施状況は、近年ますます重要性を増しています。インターンシップは、学生が実際の職場環境で働く体験をすることで、キャリア形成に役立てる制度です。日本のインターンシップの特徴と現状に関する主な内容を見ていきましょう。

実施状況の概要

文部科学省の「令和3年度大学等におけるインターンシップ実施状況について」によると、485校の大学、109校の大学院がインターンシップを実施していることが分かります。大学の485校は、令和元年度よりも減少傾向にあるものの、全体の62.3%に該当します。参加学生数は、大学生が46,262人、大学院生が4,637人でした。調査年度は新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けており、対面でのインターンシップを控え、オンラインに切り替えた企業も少なくありませんでしたので、今後はますます増加していく可能性があります。

※出典:「令和3年度大学等におけるインターンシップ実施状況について」(文部科学省)

令和3年度大学等におけるインターンシップ実施状況について:文部科学省 (mext.go.jp)

新卒採用とインターンシップの関連性

新卒採用とインターンシップは、日本の就職活動文化において密接に関連しています。この二つは、企業が新卒者を採用する過程における重要な要素であり、それぞれが学生と企業のマッチングにおいて独自の役割を果たしています。

早期の接触
インターンシップは、学生が実際の職場環境を体験し、企業文化や業務内容に触れる機会を提供します。これにより、学生は自己のキャリア志向を明確にしやすくなり、企業は新卒採用の前に、有望な学生と早期に接触することができます。

採用プロセスの一環として
多くの企業では、インターンシップを新卒採用プロセスの一環と位置づけ、インターンシップ参加学生の中から優秀な人材を見極め、採用につなげています。インターンシップのパフォーマンスが、その後の正式な採用選考に影響を与えることがあります。

学生の就職活動への影響
インターンシップは、学生が自分の興味や適性に合った仕事を見つける上で貴重な経験となります。インターンシップを通じて得た知見やスキルは、新卒採用の選考過程において自己PRや面接の際に有利に働くことがあります。

企業のブランディング
インターンシップは、企業が学生に対して自社をアピールし、企業ブランドを構築する手段としても利用されます。ポジティブなインターンシップ体験は、学生がその企業を就職先として魅力的に感じるきっかけとなり、新卒採用時の応募者数の増加にもつながります。

インターンシップの課題

質の担保

インターンシップの質はプログラムによって大きく異なるため、学生が有意義な学習経験を得られるよう、プログラム内容の充実や運営の質の向上が求められています。

参加学生の選考

人気企業のインターンシップには多数の応募がある一方で、選考過程が就職活動の一環と捉えられがちな問題があります。インターンシップの本来の目的と就職活動との関連をどう捉えるかが、今後の課題となっています。

法的・制度枠組み

インターンシップ参加学生の労働条件や安全管理に関する法的・制度的な枠組みがまだ十分に整備されていない点も課題です。学生の権利保護や安全な環境の提供が重要となります。


インターンシップは、学生にとっては実践的な職業体験を通じて自己理解を深め、キャリア選択の視野を広げる機会となります。企業にとっても、優秀な学生に自社を知ってもらい、将来の人材確保につなげる重要なツールです。インターンシップのさらなる普及と質の向上を目指し、学生と企業双方が前向きに取り組んでいく必要があります。

スキルセットとは

スキルセットとは、個人が持つ技能や知識、経験などを総合的に指したものです。これには、仕事を遂行する上で必要な専門的なスキル(ハードスキル)と、コミュニケーション能力やチームワークといった人間関係を円滑にするスキル(ソフトスキル)の両方が含まれます。スキルセットは、個人が特定の職業や業務に就くために必要な能力や資質を表す重要な概念であり、職場での成功やキャリアアップに直結します。

ハードスキル(専門技能)
ハードスキルは、学習や訓練を通じて習得できる具体的な技能や知識のことで、以下のようなものが含まれます。
•専門知識:特定の分野や業界に関する深い知識
•技術スキル:コンピューターソフトウェアや機器の操作能力など、具体的な作業を行うための技術
•言語能力:外国語の会話や書き言葉に関する能力
•分析能力:データを分析し、意味を見出す能力

ソフトスキル(人間関係スキル)
ソフトスキルは、人との関わりの中で発揮される非技術的な能力で、職場での人間関係やチームワークに不可欠です。
•コミュニケーション能力:効果的に意思疎通を行う能力
•問題解決能力:問題に直面した際に、創造的かつ効率的な解決策を見つけ出す能力
•チームワーク:他者と協力して目標を達成する能力
•適応性:変化する状況や環境に柔軟に対応する能力

スキルセットとジョブ型雇用の関係性

ジョブ型雇用とスキルセットの関係性は、現代の労働市場において非常に重要なものです。ジョブ型雇用とは、従来の日本の雇用形態であるメンバーシップ型(終身雇用や年功序列)とは異なり、特定の職務(ジョブ)に必要なスキルや成果を基にして雇用される形態を指します。この雇用形態では、個人が持つスキルセットが中心的な役割を果たします。

スキルセットの重要性

スキルセットの重要性としては、次のようなことが挙げられます。

直接的な職務への適合性

ジョブ型雇用では、求職者が応募する特定の職務に対して、どれだけ適切なスキルセットを持っているかが重視されます。つまり、その職務を遂行するために必要なハードスキルやソフトスキルを有しているかが、採用の決め手となります。

キャリアの柔軟性と成長

個々のスキルセットを磨くことは、ジョブ型雇用においてキャリアの柔軟性と成長の可能性を広げます。多様なスキルを身につけることで、異なる職務やプロジェクトへの参加が可能になり、キャリアの選択肢が広がります。

パフォーマンスの評価基準

ジョブ型雇用では、従業員のパフォーマンスがその人が持つスキルセットと直接的な成果に基づいて評価されます。これにより、仕事の成果が公平に評価されやすくなり、スキルと実績に応じた報酬やキャリアアップのチャンスが提供されます。

継続的なスキルアップの促進

個人は、変化する労働市場の需要に対応し、競争力を保つために、継続的にスキルセットを更新し磨き続ける必要があります。ジョブ型雇用では、これが特に重要とされ、個人の成長が企業の成長に直結します。

まとめ

最近の新卒採用の動向や特徴を概観すると、多様性とインクルージョンの重視、オンライン選考の普及、通年採用の拡大などが挙げられます。これらはグローバル化や労働市場の変化、新世代の価値観に対応しようとする企業の取り組みが反映された結果と言えます。

また、インターンシップの充実や自己PR・ストーリーの重視など、キャリア意識の変化への対応も新卒採用における重要なポイントです。特にインターンシップは、学生と企業のマッチングを促進し、学生が自身のキャリアについて深く考えるきっかけを提供します。スキルセットの重視も、新卒採用において重視されます。特にジョブ型雇用の普及に伴い、具体的な職務に対する直接的な適合性や、キャリアの柔軟性と成長の可能性を広げるために、ハードスキルとソフトスキルの双方が重要視されています。

新卒採用システムの問題を解決するためには、通年採用の導入、中途採用の活性化、インターンシップの充実、キャリア教育の強化などの取り組みが必要です。さらに、ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)の推進や柔軟な働き方の導入、スキルセットを重視したパフォーマンスベースの評価制度の確立も、より効果的な新卒採用戦略を構築するために重要な要素です。

今後の新卒採用では、より多様性を受け入れ、個々の学生や求職者の能力や適性を正確に評価するための新たなアプローチが求められています。企業としては、変化する労働市場や社会のニーズに柔軟に対応し、持続可能な成長を実現するためにも、新卒採用の枠組みを見直し、革新的な採用戦略を採用することが不可欠です。

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