情報処理・通信技術者(ソフトウェア開発を除く)とは、コンピュータを用いて情報の入出力・変換・計算・検索・蓄積・通信などを行うため、情報処理・情報通信に関する専門的知識と経験を応用して行う、適用業務の分析、情報処理システムの企画・設計、システム開発プロジェクトの管理、コンピュータネットワークの構築、構築されたシステムの運用・管理などの技術的な仕事に従事するものをいいます。転職・就職活動では、まずは職種の内容を網羅的に確認したうえで、職種ごとの特徴や傾向を理解するようにするとよいでしょう。ここでは、職種をより詳しく知るきっかけとなるように、「情報処理・通信技術者(ソフトウェア開発を除く)」を紹介します。
目次
職種とは
「職種」とは、仕事の種類のことです。会社がある事業を手がけるとき、会社内では、複数の業務・役割が必要になります。例えば、モノやサービスをつくる(生産・製造)、モノやサービスを売る(営業・販売)、業績や経費支出等の計数を取りまとめる(経理)などがあります。このように、働く人が従事する業務・役割の違いが職種です。
業種や業界が企業や仕事の枠組み全体を意味するのに対し、職種は企業や組織の中でさらに細かく分かれる業務や役割を意味します。
業種との違い
「業種」とは、事業の種類のことであり、世の中のさまざまな事業・ビジネスの種類を区分するために用いる言葉です。具体的な区分の仕方はいくつかあり、総務省が定める「日本標準産業分類」や、証券業界で使われている証券コード協議会が定める「業種別分類項目」が有名です。
学生が就職活動のためにどんな業種があるかを知りたい際には、証券コード協議会が定める「業種別分類項目」の中分類33種を目に通してみるとよいでしょう。多すぎもせず、少なすぎもしないので、研究をする際にもちょうどよいと思います。
一方で、就業経験がある人が転職活動を始める際は、より詳細に、今の自分の業種と職種を正確に把握することが重要です。産業分類(業種)や職業分類(職種)の一覧表を参照すると、自分の所属する企業の業種や、自分が従事する職種を確認できます。業種については正確な定義はなく、業種の分類を独自に行っている求人検索エンジンもありますが、総務省の「日本標準産業分類(令和5年6月改訂)」で細かく分類されており、それが基本になっています。
厚生労働省編職業分類とは
「厚生労働省編職業分類」(以下「職業分類」といいます)とは、職務の類似性及び職業紹介業務における求人・求職の取扱件数などに基づいて、それぞれの職業に対して社会的にどの程度需給があるかを考慮して職業を区分し、それを体系的に分類したもので、職業紹介事業や労働者の募集等に共通して用いるための職業分類として編集されたものです。
1953 年に初めて作成され、その後、主に社会経済情勢の変化等に伴う職業構造の変化を職業分類表に反映させるための数次の改定が行われています。
直近では2022年4月に、「第5回改定 厚生労働省編職業分類」として新職業分類が公表されました。その改定の背景としては、2011年改定の職業分類が改定から一定年数が経過し、この間の産業構造、職業構造の変化等に伴い、求人・求職者の職業認識との乖離が生じている分野がみられ、マッチング上の課題も散見されていたことがあります。これらの課題を踏まえ、日本標準職業分類に準拠して作成されていた職業分類を、統計という観点においては日本標準職業分類に対応させつつ、求人・求職のマッチングをより円滑に行えるようにするという観点から行われています。
この職業分類の分類表は、大分類、中分類、小分類の3段階に区分された分類項目によって構成されています。最も大きな区分である大分類は、次に掲げる15種類の区分で構成され、より細かな区分として、中分類、小分類を設定しています。
【大分類】
管理的職業
研究・技術の職業
法務・経営・文化芸術等の専門的職業
医療・看護・保健の職業
保育・教育の職業
事務的職業
販売・営業の職業
福祉・介護の職業
サービスの職業
警備・保安の職業
農林漁業の職業
製造・修理・塗装・製図等の職業
配送・輸送・機械運転の職業
建設・土木・電気工事の職業
運搬・清掃・包装・選別等の職業
まず、今の自分の職種を正確に把握するために、職業分類でどこに分類されるか確認していきましょう。
分類は、大分類(2桁数字で表記)、中分類(3桁数字で表記)、小分類(5桁数字で表記)の3つのレベルに分かれています。まず、職業分類の大分類の概要から、仕事内容が大分類のどこに分類されるかを確認します。次に、より細かい分類を知りたい場合、中分類、小分類と、更に細かく分類項目が分かれていますので、各項目の説明や内容例示から、分類を確認します。
参照:職業分類表 改定の経緯とその内容:第5回改定厚生労働省編職業分類|労働政策研究・研修機構(JILPT)
このページでは、前述した15種類の区分の「研究・技術の職業」のうち、「情報処理・通信技術者(ソフトウェア開発を除く)」を紹介します。
情報処理・通信技術者(ソフトウェア開発を除く)とは
コンピュータを用いて情報の入出力・変換・計算・検索・蓄積・通信などを行うため、情報処理・情報通信に関する専門的知識と経験を応用して行う、適用業務の分析、情報処理システムの企画・設計、システム開発プロジェクトの管理、コンピュータネットワークの構築、構築されたシステムの運用・管理などの技術的な仕事に従事するものをいいます。
この仕事を遂行するには、通例、大学などの専門課程を修了したか又はこれと同程度以上の専門的知識と実務的経験を必要とします。
なお、以下のものは、それぞれの分類項目に分類します。
(1)公的研究機関・大学の附属研究所などの研究施設において、情報処理・情報通信に関する専門的・科学的な知識を必要とする研究の仕事に従事するもの[004 研究者]
(2)コンピュータの開発・設計に関する技術的な仕事に従事するもの[006 開発技術者]
(3)コンピュータを製造するため、製品の設計情報にもとづく工程設計・作業設計などの技術的な仕事に従事するもの[007 製造技術者]
この中分類に該当する職業は、次のいずれかの小分類に分類します。
IT コンサルタント[010-01]
IT システム設計技術者[010-02]
IT プロジェクトマネージャ[010-03]
IT システム運用管理者[010-04]
IT ヘルプデスク[010-05]
通信ネットワーク技術者[010-06]
その他の情報処理・通信技術者( ソフトウェア開発を除く)[010-99]
IT コンサルタント[010-01]
企業・組織の経営・業務環境の分析などにもとづいて経営・業務上の課題を整理し、課題解決のために情報処理・通信技術を活用したシステムの提案などを行う専門的な仕事に従事するものをいいます。
○ この項目に該当する職種で代表的なものは次の通りです。
ERP パッケージコンサルタント
システムアナリスト
システムコンサルタント
情報セキュリティコンサルタント
デジタルビジネスイノベーター
× この項目に誤って分類されがちな職種は次の通りです。
システム開発営業員[048-06]
なお、情報システムの構築に関する営業の仕事に従事するものは、[048-06 システム開発営業員]に分類します。
IT システム設計技術者[010-02]
企業・組織の経営・業務上の課題を解決するため、情報処理・電気通信技術を活用した、ハードウェア・ソフトウェア・ネットワークなどによって構成されるシステムについて、全体の基本構造を企画・設計する技術的な仕事に従事するものをいいます。
パッケージソフトウェアの開発の企画、企業などにおけるシステムの導入に関する企画及びシステム導入時の監督の仕事に従事するものを含みます。
○ この項目に該当する職種で代表的なものは次の通りです。
システムアーキテクト
社内システムエンジニア(主にシステムの設計に従事するもの)
システムエンジニア(基盤システム)
システム設計技術者
ソフトウェアアー キテクト
IT アーキテクト
× この項目に誤って分類されがちな職種は次の通りです。
ソフトウェア開発技術者(WEB・オープン系)[009-01]
ソフトウェア開発技術者(組込・制御系)[009-02]
プログラマー[009-03]
ソフトウェア開発技術者(汎用機器系)[009-99]
なお、以下のものは、それぞれの分類項目に分類します。
(1) ウェブ系・オープン系のソフトウェアを作成するため、要件定義、基本設計書・詳細設計書の作成、仕様書の作成などの開発の仕事に従事するもの[009-01 ソフトウェア開発技術者(WEB・オープン系)]
(2) 各種の機械器具に組み込まれ、その動作を制御するマイクロコントローラのソフトウェアを作成するため、要件定義、基本設計書・詳細設計書の作成、仕様書の作成などの開発の仕事に従事するもの[009-02 ソフトウェア開発技術者(組込・制御系)]
(3) プログラミング言語を使用してコンピュータプログラムのソースコードを記述する仕事に従事するもの[009-03 プログラマー]
(4) 汎用機系のソフトウェアを作成するため、要件定義、基本設計書・詳細設計書の作成、仕様書の作成などの開発の仕事に従事するもの[009-99 ソフトウェア開発技術者(汎用機器系)]
IT プロジェクトマネージャ[010-03]
システム開発を担当するプロジェクトの責任者として、プロジェクト実行計画の作成、予算・要員・進捗・品質の管理、業務の監督などプロジェクト全体を管理する専門的な仕事に従事するものをいいます。
○ この項目に該当する職種で代表的なものは次の通りです。
プロジェクトマネージャ(アプリケーションソフトウェア開発)
プロジェクトマネージャ(システム開発)
プロジェクトマネージャ(情報処理)
プロジェクトマネージャ(IT)
× この項目に誤って分類されがちな職種は次の通りです。
プロジェクトリーダー(システム開発)[009:主に従事する仕事に即して分類する]
技術リーダー( システム開発)[ 009:主に従事する仕事に即して分類する]
チームリーダー(システム開発)[009:主に従事する仕事に即して分類する]
PMO(プロジェクトマネジメントオフィス)事務員[035-99]
なお、以下のものは、それぞれの分類項目に分類します。
(1) システム開発プロジェクトの一員として担当業務に従事しながら、プロジェクトの下に設置されたチームのリーダーとしてチームを統括し、仕事の割り当て、作業手順の決定、工数・進捗・品質の管理などの管理的な性質の仕事にも従事するもの[009 プロジェクトリーダー(システム開発):主に従事する仕事に即して分類する、009 技術リーダー(システム開発):主に従事する仕事に即して分類する、009 チームリーダー(システム開発):主に従事する仕事に即して分類する]
(2) プロジェクトマネジメントオフィス(PMO)において、プロジェクト実施の支援、プロジェクト間の調整、プロジェクトの監査などに関する事務の仕事に従事するもの[035-99 PMO(プロジェクトマネジメントオフィス)事務員]
IT システム運用管理者[010-04]
構築されたシステム及びネットワークの運用・監視・維持・管理・安全性確保・保守に関する技術的な仕事に従事するものをいいます。
○ この項目に該当する職種で代表的なものは次の通りです。
医療情報運用管理者
運用監視オペレーター
サーバー管理者
システム運用オペレーター
システム運用管理者
システム保守員
システム管理者
社内システムエンジニア(主にシステムの運用に従事するもの)
情報セキュリティ技術者
セキュリ ティアナリスト
セキュリティエキスパート(オペレーション)
セキュリティエン ジニア( オペレーション)
ネットワーク管理者
× この項目に誤って分類されがちな職種は次の通りです。
システムアーキテクト[010-02]
社内ヘルプデスク[010-05]
ネットワーク技術者[010-06]
汎用機オペレーター[043-99]
パソコン訪問サポート員[058-99]
カスタマーエンジニア(コンピュータ)[ 075-02]
サービスエンジニア(コンピュータ) [075-02]
なお、以下のものは、それぞれの分類項目に分類します。
(1) 主にシステム全体の構成を企画・設計する技術的な仕事に従事するもの[010-02 システムアーキテクト]
(2) 社内に常駐して、システム・ネットワーク・IT 機器・ソフトウェアの操作方法などに関する社員からの問い合わせに応対する仕事に従事するもの[010-05 社内ヘルプデスク]
(3) コンピュータネットワークの構築に関する技術的な仕事に従事するもの[010-06 ネットワーク技術者]
(4) 大型汎用コンピュータを操作して、情報の入出力・計算・加工・蓄積・検索などを行う仕事に従事するもの[043-99 汎用機オペレーター]
(5) 個人宅に出張し、コンピュータの設定、操作方法の説明などを行う仕事に従事するもの[058-99 パソコン訪問サポート員]
(6) コンピュータ機器の保守作業に従事するもの[075-02 カスタマーエンジニア(コンピュータ)、075-02 サービスエンジニア(コンピュータ)]
IT ヘルプデスク[010-05]
社内に常駐する等して、基幹業務システム・ネットワーク・IT 機器・ソフトウェアなどに関する操作方法等の問い合わせへの電話やメール、出向いて応対、社内に導入したコンピュータの設定、OS・ソフトウェアの保守、システム・ネットワークの障害時の対応などを行う仕事に従事するものをいいます。
○ この項目に該当する職種で代表的なものは次の通りです。
社内サポートデスク
社内ヘルプデスク
× この項目に誤って分類されがちな職種は次の通りです。
システム管理者[010-04]
社外ヘルプデスク受付係(電話によるもの)[036-01]
テクニカルサポート受付係(電話によるもの)[036-01]
ユーザーサポート受付係(電話によるもの)[ 036-01]
なお、以下のものは、それぞれの分類項目に分類します。
(1) システム・ネットワークの運用・監視・管理などの仕事に従事するもの[010-04 システム管理者]
(2) 他の事業所からヘルプデスク機能を受託している会社において、障害・不具合の発生などを電話で受け付け、対応する仕事に従事するもの[036-01 社外ヘルプデスク受付係(電話によるもの)]
(3) 市販のハードウェア・ソフトウェアの操作方法・設定方法などに関する電話・メールなどによる問い合わせに応対する仕事に従事するもの[036-01 テクニカルサポート受付係(電話によるもの)、036-01 ユーザーサポート受付係(電話によるもの)]
通信ネットワーク技術者[010-06]
有線又は無線によるデータ通信のネットワークシステムを構築するため、要件定義、基本設計書・詳細設計書の作成、初期設定(ネットワーク機器・サーバーの設置・設定)、ネットワークの試験などの技術的な仕事に従事するものをいいます。
以下のものを含みます。
(1) 事業用電気通信設備及び事業所内の LAN 設備に関する企画・設計、設備工事の施工管理、設備の維持管理の仕事に従事するもの
(2) 通信規約(プロトコル)などの通信技術に関する技術的な仕事に従事するもの
○ この項目に該当する職種で代表的なものは次の通りです。
携帯電話基地局工事施工管理技術者
サーバーエンジニア(構築・設定を行うもの)
電気通信技術者
電気通信施設技術者
伝送プロトコル技術者
ネットワークエンジニア
ネットワーク技術者
サーバー構築技術者
× この項目に誤って分類されがちな職種は次の通りです。
システムアーキテクト[ 010-02]
システム管理者[ 010-04]
通信線配線工(屋内)[094-04]
通信装置据付作業員[094-04]
なお、以下のものは、それぞれの分類項目に分類します。
(1) 主にシステム全体の構成を企画・設計する仕事に従事するもの[010-02 システムアーキテクト]
(2) システム・ネットワークの運用・監視・管理などの仕事に従事するもの[010-04 システム管理者]
(3) 通信回線を構内に配線する作業に従事するもの[094-04 通信線配線工(屋内)]
(4) 有線・無線通信用の送信機・受信機の据え付けの作業に従事するもの[094-04 通信装置据付作業員]
その他の情報処理・通信技術者(ソフトウェア開発を除く)[010-99]
010-01~010-06 に含まれない、情報処理・通信技術に関する技術的な仕事に従事するものをいいます。
○ この項目に該当する職種で代表的なものは次の通りです。
AIエンジニア
情報システム監査技術者
セキュリティエキスパート(脆弱性診断)
セキュリティエンジニア(脆弱性診断)
データエンジニア
ビッグデータエンジニア
× この項目に誤って分類されがちな職種は次の通りです。
ホームページ更新係員[043-01]
コンピュータ設定係員[043-99]
PC キッティング係員[043-99]
なお、以下のものは、それぞれの分類項目に分類します。
(1)インターネットホームページの情報を更新する仕事に従事するもの[043-01ホームページ更新係員]
(2)事業所で使用予定のパーソナルコンピュータの環境設定、OS の設定、必要なソフトウェアのインストールなどの作業に従事するもの[043-99 コンピュータ設定係員、043-99 PC キッティング係員]
まとめ
転職・就職活動では、業種や業界、職種など、似た言葉が数多くありますが、どれも異なる意味を持っています。自分に合った仕事を見つけ、転職・就職活動を成功させるためには、それぞれの言葉の意味を正しく理解しておく必要があります。本記事を参考に、まずは職種の理解を深めておきましょう。
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